バスについての知見を深めるため、普段は鉄道で向かう場所へバスで向かうなど、日常的にバスを利用し、路線バス・高速バスを含め様々な車内環境を体験しました。
様々なバス事業者様を実際に利用する中で得た知見を踏まえ、東京BRT様が運用されているルートへ継続的に足へ運び、他のバス事業者様との比較を通じ、主に経路や利用者層などの違いを検討しました。また、車両音やスピーカーの周波数特性の調査および車両内の反響を確認しました。
本ノートでは、実用的な側面を中心にお話しします。
【ISUZU殿:エルガデュオ(連接バス)/ ISUZU殿:エルガ / TOYOTA殿:SORA(燃料電池バス)】
東京BRT様では上記3種類の車両を保有されています。よって車内の音環境は車両の種類や走行状態によって変化します。
各車両について、平日↔︎土休日、朝夕ラッシュ↔︎日中の異なる時間帯に主な3つのルート(新ルート開業前時点)へ数回ずつ乗車し、それぞれの停車中・低速走行・高速走行時における車両音の周波数特性を調査・分析しました。あわせて、スピーカーの再生可能な音域や、音圧を確保しやすい周波数帯についても確認しました。
なお車内における音の反響も、連接バス↔︎単車、車内の床・天井等の材質、乗車人数(混み具合)によって変化する点に注意が必要でした。
以上のように、各車両の変動要因である車両音・車内反響や、固定条件であるスピーカー特性の調査に注力することで、東京BRT様に特化した車内メロディ作りの土台を構築しました。
まず、反響しやすい連接バスに配慮し、音源の残響成分を低減しました。反響しやすい空間で残響を多く含んだ音源を再生すると音の明瞭度が低下し、聞き取りやすさが損なわれる恐れがあるからです。
なお、曲構造(旋律・伴奏など)に関しては、車両音が比較的静かな燃料電池バスでの聞こえ方を一つの基準として設計しました。それは今回の車内メロディ制作のコンセプトの一つに「実用性を考慮した上で表現の様々な可能性を試みる」点があるからです。あらゆる利用者にとって聞こえやすいサイン音となることを前提に、東京BRT様や車両・停留所デザイン、沿線地域を表現する上で挑戦できる領域を検討することで、公共交通機関とお客様とを結ぶデザインの音としてより効果的な手段を検討できると考えました。
旋律はあらゆるお客様にとっての「サイン音の知覚・認識・識別」の中心となるよう全車種・全走行状態を想定し、車種や走行状態が変化しても聞こえやすく聞き取りやすい音色となるよう設計しました。一方上記コンセプトの通り、伴奏群ではデザイン・表現をお客様に感じていただけるよう、燃料電池バス走行中や連接バス・エルガ停車中に聞こえる設計としています。
つまり、車両や走行状態、車内環境によって聞こえ方が変化することを前提としながら、伝えるべき要素と、聞こえ方が変化してもよい要素を分けて設計したということです。ユニバーサルデザインにも通づる点がありますが、全てに行き渡ったデザインは無理と言っても過言ではありません。想像できる利用者の多様な状況を考慮し、可能な限り多くの人に機能するデザインを目指す姿勢が大切だと考えています。